LTSpice入門 そのいち(ダイオードを使った簡単な回路)
電子回路のシミュレーションに興味を持ったのでLTSpiceなるものをインストールしてみて適当に使ってみた。
ここからダウンロードできる。Analog Devicesというアメリカのそこそこ(というかすごく)大きな企業が提供しているフリーソフトで、電子回路のシミュレーションができる。ざっくりいうと適当な回路に適当な入力を入れた時の出力を見られたりする。
(LT)SpiceというのはSimulation Program with Integrated Circuit Emphasisの頭文字をとっている。意味は読んで字のごとく。LTはLinear Technology社の略で今はAnalog Devicesに統合されたらしい。
本当に簡単な回路ならブレッドボード上に実装してみればいいのだが、オシロスコープや電源なんてものは一般家庭にはないのだからシミュレーションするのがいちばん。というか簡単な回路でも配線を繋ぎ変えたりするのが面倒すぎてつらい。結局ばらしちゃうわけだし。
今回はダイオードを使った簡単な回路を作ってシミュレーションの入出力と理論を比較した。
ダイオードを使ったスライス回路
ダイオードという電気素子の名前は誰もが一度は聞いたことがあるのではないか。LED(Light Emitting Diode)もダイオードの一種だし。
ダイオードは電荷を運ぶキャリアを正孔とするP型半導体とキャリアを電子とするN型半導体が組み合わさってできている。だから(基本的に)一方向にしか電流を流さず整流作用があるみたいな話は高校?大学?くらいでお勉強する話かな。詳しい話は自分もよくわかってないけどとりあえず整流作用があるんだよね、うんうんという感じで話を進める。
とりあえずこんな回路を作ってみた。LTSpiceの簡単な使い方は有志によるpdfが分かりやすくて良かった。
入力は直流成分が0Vの30V(p-p)の1Hz正弦波としてみた。BZX84C10Lのデータシートは以下からどうぞ。
そういえば簡単な回路とか言いつつこれはツェナーダイオード(定電圧ダイオード)といって逆方向耐電圧を利用して定電圧を作り出すダイオードで、普通のダイオードじゃないからちょっとめんどくさい話になりそう。
普通のダイオードもツェナーダイオードも順方向電圧(Vf)と逆方向耐電圧(降伏電圧といったほうが正しいかも)(Vz)というものがあって、順方向電圧を超えた部分は順方向電圧でダイオードの出力が固定される。逆方向耐電圧についてもしかり。つまり整流作用があるとはいえ、逆方向耐電圧を超えれば電流は流れてしまう(これを降伏と言う)ということだ。
話を本筋に戻して電圧と電流の時間波形を見てみよう。
このダイオードの順方向電圧は0.7-0.9V(@25℃、75V)、逆方向耐電圧は10Vとデータシートに書いてある。なので0~0.7Vくらいまでは普通に電圧が上昇していって、それ以上は0.7Vより上がらなくなる。逆方向について考えると0~-10Vまでは電圧が降下していって、それ以下は-10Vより下がらなくなる。
さてシミュレーションの結果はどうか。
順方向電圧については0.4V程度で定電圧になり、逆方向電圧については-10.2V程度で定電圧になるという結果が得られた。大体あってる(なんで順方向電圧が0.4Vなんだ???データシート的には印加する電圧が少なくなるほど曲線が左にシフトしていってるから不思議ではないかもしれないが、曲線が描いてないから分からない)。
さて、今回はほとんどマイナスの電圧のみを定電圧にしたわけだけれど、こんな風に二つのダイオードを組み合わせることでプラスとマイナス方向の電圧を両方制限することができる。
さっきの回路と同様に考えると、まずD2のダイオードによってプラス方向には順方向電圧0.4V分の電圧降下が起こり、マイナス方向には逆方向耐電圧-10.2V分の電圧降下(つまり10.2V分の電圧上昇)が起こる。なのでVd1地点では-4.8V~14.6Vの電圧になる。次にD1のダイオードでも同様のことが起こるのでVoutでは-4.4V~4.4Vの電圧が観測されるはず。
シミュレーションの結果はどうなるか。
大体そんな感じのことになっているな、よしよし。微妙に波形がずれてるのは蓄積効果(ダイオードが流す電流は急に0にはなれないからオフになるまで少し時間遅れが発生する)によるものかなぁ。
という感じでダイオードによるスライス回路が実現できました。やったね!
今日はここまで。